今日は新宿5丁目近くにある、完全にアングラなお店にお邪魔している。お店といっても普通のマンションの一室を使っているし、当然広告なんて出してないので探しても見つかる事はありえない場所である。そんな場所をどのように掘り当てたかといえば、答えを言ってしまえば常連からの紹介だ。長くこの世界に浸かっていると、コネの一つや二つはできるのだ。
入店前にレクチャーされていたので驚きはしないが、この店では現金でのチップ購入が出来ないらしい。ではどのように入金するかだが、クレジットカードでの決済だと言うのだ。足がつきやすいという理由から、使うことはありえないと思っていただけに新鮮だ。
実際にやってみると、多少不便でもあった。携帯から専用サイトに飛び、クレジット情報を入力して購入し、完了画面を店舗スタッフに見せる。決済処理にはタイムラグが発生するため購入画面を見せる必要があるのだが、初めての人間だと抵抗があるかもしれない。
手続きを終えてバカラテーブルに着席すると、入金した10万円分のマネーチップと、2枚の100ドルサービスチップが運ばれてきた。サービスチップは10ドルに変更ができないため、流れがくるまで温存する。
現在の罫線はプレーヤー4目落ち。流れに乗って20ドルをプレーヤーに置いたのだが、合えなく敗北。しょっぱなから躓いてしまった。幸先がよろしくないので、暫くは我慢のルックだ。
シューの終わりが見えてきたところで、ようやくプレーヤーに3目落ちの罫線がでてきた。これが流れだと感知した俺は、一気に勝負に出た。温存してあったサービスチップを2枚、200ドル相当の勝負に出たのだ。
この時の1枚目は通称額縁。ここでは“クチャー”とか”オモニ“とも言ったりする様だが、点数にはならないカードだ。2枚目をめくる手に力が掛かる。掌が汗ばんで、微妙に震えているのが己でも判る程度には緊張している。息を吹きかけ、呪文の様に「ナイン、エイト」と繰り返し唱えながら、縦側に少し起こして足が2本あるのを確認。横に向けて「3個、4個」と唱えながら、端からゆっくりめくり上げ、マークが4本有るのを確認。最後に一気にめくり、出たカードは『9』!俺の勝ちだ。
他の賭人達(6名)は、俺の反対を陣取っていやがったので最高に気持ちよかった。元々人の反対を取る事が好きな俺でも、年季の入った賭人を複数相手に勝負するのは辛いものがあったが、先に置いたのは俺だし、決めるのは個人の意思だから恨みっこ無しだ。
サービスチップはマネーチップに差し替えられ、同額の200ドルチップが俺の手元に来た。サービスチップは一度張ると勝負の結果に関係なく取られてしまうのだが、勝てば同額のマネーに、負ければ何も無し。判りやすいシステムだ。
次の勝負はベット額を下げ、プレーヤーに40ドル、引き分けに20ドル置いた・・・・―――そのつもりだった。
ノーモアベットの掛け声を聞いた瞬間眼を疑ったね。40ドルのつもりが、400ドル張ってしまっているではないか。しかも、引き分けに200ドルも!基本、サイドベットはお遊び程度にしか考えていないし、あえてピンポイントで狙う必要もないのは理解しているのに・・。
しかし、修正はもう出来ない。成り行きを見守るしかないのだ。当然カードは俺に渡された。流石に怖いので、ディーラーに差し戻し、オープンカードと指示。素早くめくられたカードを見た瞬間、心臓が痛いくらいに拍動し始めた。プレーヤーの合計点数は『9』 負け無しだ。格好がつかないので顔には出さなかった(つもりだ)が、俺も小心者だなと改めて実感した瞬間でもある。
バンカーサイドのカードがまだ出ていないが、勝負は負け無し。最低でも200ドルの戻しが確定だと余裕をかましていたら、バンカーサイドに出されたカードは『6』と『3』。
絶好の機会を逃したと、一瞬クラクラしてしまったが、引き分けに200ドルを張っている事を思い出し、脳内アドレナリンが全力で生み出されたのは言うまでもない。
トランス状態に陥った俺は、サイドに100ドル、本線に200ドルをプレーヤーに置き、前ゲームの再現VTRのように引き分けを狙い撃つことに成功した。
これでチップは一気に3000ドルオーバー。ここらが潮時だと判断して終了をすることに。アウトコールをすると、黒服がキャッシュカードを持ってきて、暗証番号を俺に伝えた。どうやらこれを使ってATMから現金を引き出せということらしい。
・・・・無事に引き出すことはできたので、このカードについて深く考えるのはやめておこう。
解説 バカラの遊び方
この物語はフィクションです。あくまでも「読み物」としてお楽しみいただくためのものであり、インカジ(カジノカフェ)を奨励するものではありません。ネットカフェでのインカジ利用では摘発者が頻発しています。
参考 カジノカフェ(インカジ)摘発・逮捕の情報と見解