2018年にIR整備法、通称「カジノ法案」が成立したことにより、いよいよ日本でもカジノリゾートができる! と話題になりました。
現在、日本のカジノ開業の候補地は大阪府・大阪市のみ国からの認定を受けており、着工計画が進んでいる段階です。
もう一つの候補地である長崎県は、現在のところ国に計画を申請しているものの、国からの審査は継続されています。
そして、現在申請は行っていないものの、IRの誘致を表明している自治体も多くあります。
このページでは、現在IRができる有力な候補地や、今後カジノリゾートが開業される可能性がある自治体について、最新情報を解説します。
この記事のまとめ
- 「IR」とは統合型リゾートのことで、カジノ以外にもホテルやショッピングモールが併設される
- 2023年8月時点で有力なIR候補地は「大阪・夢洲」と「長崎・ハウステンボス」
- 日本にカジノができるのは最短で2029年~2030年頃になる
この記事はおよそ 13分 で読むことができます。時間がない方は目次を活用しましょう
カジノ法案(IR)の目的
IRにたくさんの自治体が誘致を表明している! という話を聞くと、「カジノを作るだけなのになんでこんなに積極的なの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そもそもカジノ法案はただカジノを作るだけが目的ではありません。ここで、IRの目的について解説します。
IRとは「Integrated Resort」、つまり「統合型リゾート」のことを指します。ホテルや劇場、国際会議場や展示会場などのMICE施設、ショッピングモール、レストラン、映画館などが一体となったリゾート地のことで、この施設の中の一つにカジノがあります。
ホテルを取り、劇場の興行を観覧して、ショッピングモールで買い物、といった、「休暇でやりたいこと」を1つの場所で全てまかなえる施設、これがIRというものになります。
そのため、IRの目的は「IRを作って観光産業を活性化させることにより、地域経済を復活させること」となっています。
ただし、カジノがIRの収益の大黒柱になることは間違いないため、治安が悪化しないよう適切に管理していかなくてはなりません。
日本のカジノはいつ頃できる?現在どうなっているのか調査
2018年にIR整備法が成立した当初、日本のカジノリゾートが開業するのは2025年頃と言われていましたが、新型コロナウイルスの影響などもありなかなか話が進んでいないのが現状です。また、コロナの影響で話が流れた自治体、現在計画を凍結している自治体もあります。
現在のところ、大阪府・大阪市が進めている計画では2029年の開業予定を目指しているとされています。
ただし、建設予定地は大阪万博が開催される夢洲となっているため、大阪万博が行われた後に本格的な工事が始まります。場合によっては開業が2030年以降に後ろ倒しされる可能性もあります。
日本のカジノ(IR)誘致の現時点で有力な候補地
IR整備法では、カジノを開業できる候補地が最大3ヶ所と定められており、2022年4月までに区域認定の申請を行う必要があると決められていました。
最初は多くの自治体が手を挙げたのですが、整備計画の凍結や議会の反対などにより、最終的に申請を行った自治体は「大阪府・大阪市」と「長崎県」の2箇所となりました。
現在は大阪府・大阪市が国から整備計画を認定されており、長崎県は現在審査中となっています。そのため、このまま計画が進んでいけば大阪に初めてカジノリゾートが出来るということになります。続いて、大阪・長崎のIR候補地について詳しく解説します。
大阪府・大阪市[夢洲]
2018年にIR整備法が成立し、すぐに意欲を示した自治体は大阪府・大阪市です。
大阪市此花区にある面積およそ390ha(甲子園球場100個分)の人工島・夢洲(ゆめしま)に建設する計画を立て、IRの区域整備計画を申請しました。そして2023年4月、IR区域整備計画が政府の認定を受け、正式にカジノを開業できることになりました!
また、夢洲は2025年に開催される大阪万博の開催地でもあります。夢洲は元々ゴミ処理場としての利用を目的に作られた埋立地ですが、今までに開発計画やオリンピック誘致などに失敗し、大阪の負の遺産となっていた場所としても知られています。
既に大阪メトロが夢洲へ地下鉄路線の延伸を行うことを発表しているため、今後はより経済効果が期待される土地と言えるでしょう。
大阪IRの事業効果とコンセプト
大阪IRを手掛けるMGMリゾーツ・オリックスは、大阪IRのコンセプトとして「結びの水都」を掲げています。
大阪は、市内の至る部分に川が流れており、水運に支えられて発達したことから水都という別名があります。IRは多くの施設が一つに集まっていることから、あらゆるものを結んでいる起点としての役割、そして大阪の伝統や文化を継承していくという思いが込められています。
夢洲の自然を生かした、大阪の新たなランドマークを目指して建設される施設、これが大阪IRです。
さて、大阪IRでは以下のような事業効果を見込んでいます。
経済効果 | 見込み内容 |
---|---|
年間売上 | 5,200億円 |
年間来場者数 | 2,000万人(国内1,400万人 / 国外600万人) |
雇用者数 | 15,000人 |
大阪府・大阪市への年間納付金 | 1,060億円(入場料を含む) |
一般的なIRでは、年間売上のうち80%がゲーミングエリア(カジノ施設)の収益と言われています。そのため、カジノ施設の収益はおおよそ4,300億円です。国内外から相当数のカジノプレイヤーが訪れることを見込んでいると言えます。
大阪IRの今後のスケジュールは?
2022年に大阪府・大阪市が申請した整備計画では、このようなスケジュールで運用されるという想定がありました。
スケジュール | 計画内容 |
---|---|
2022年秋 | 区域整備計画の認定〜行政手続き |
2023年 | 工事の発注、着手 |
2029年夏 | 工事完了 |
2029年秋 | IR施設の開業 |
しかし、政府の認定審査が長期化し、2023年4月にようやく認定が降りたため、工程に約半年の遅れが生じることになりました。
大阪IRの事業を手掛けるMGMリゾーツによると、開業時期は2030年上半期を見込んでいるとアナウンスしていますが、大阪府・大阪市は計画の変更を今の所発表していません。
2023年9月15日追記
大阪府と大阪IRは9月8日、観光庁に区域整備計画の変更と実施協定の認可の申請を実施した。実施協定では国の認定が想定より遅かったことを理由に大阪IRの開業時期を2030年秋に延期。加えて液状化や土壌汚染、地盤沈下などの夢洲特有の土壌対策や工事の環境などにより、1年から2年後ろ倒しとなる可能性があるとしている。
引用元: 大阪IR、開業を30年秋に延期、初期投資額増
大阪府と大阪IRは、2023年9月8日に、大阪の統合型リゾート(IR)プロジェクトについての計画変更と実施協定の観光庁への申請を行いました。
国の承認が予想よりも遅れたため、大阪IRの開業予定は2029年秋から2030年秋に延期されました。
さらに、夢洲地域に特有の問題、具体的には土壌の液状化、土壌汚染、地盤沈下などにより、開業がさらに1年から2年遅れる可能性も検討されています。
有力事業者のMGMリゾーツ・オリックスとは?
大阪IRを運営する会社は「大阪IR株式会社」という名前ですが、この会社の中核株主となっている企業は「MGMリゾーツ・インターナショナル」の日本法人、そしてオリックス株式会社です。
ラスベガスに拠点を置くMGMリゾーツは、IR事業では非常に名の通った会社です。ラスベガスにあるベラージオ・アリア・ルクソール・エクスカリバーなど名だたるカジノリゾートは全てMGMの施設、と言えばピンと来る方も多いのではないでしょうか?
アメリカを中心にマカオやドバイなど10拠点・30件近くのリゾートを運営しており、年間売り上げはなんと1兆円以上!
IR分野では非常に高い実績があります。現在はIR事業の参入を見越して日本にも拠点がある企業となっています。
また、オリックスは関西で知らない人はいない超有名企業です。不動産、銀行、プロ野球の運営など幅広いジャンルで事業を手掛けており、東証プライムやニューヨーク証券取引所にも上場しています。
このように、IR事業に特化した企業と大阪をよく知る企業がタッグを組んで作られた企業、それが大阪IR株式会社です。
長崎県・佐世保市[ハウステンボス内]
長崎県も、IR誘致を早くから推進してきた自治体の一つです。
中国・韓国からの距離が近いことや西九州新幹線が開業したことなどから、国内外から多くの観光客が見込める長崎県では、九州一のテーマパークと言われる「ハウステンボス」の敷地の一部を利用したカジノリゾートを計画しています。
ハウステンボスといえば、オランダをイメージした花畑や石畳が立ち並ぶコンセプト型のテーマパークですが、実は早くからカジノの誘致には積極的でした。
過去にはハウステンボスの親会社がカジノを遊べるクルーズ船を運航していたこともあり、2016年頃からハウステンボスの敷地内にアミューズメントカジノを設置。
また、2017年には長崎県庁の政策企画課内に「IR推進室」を設置し、九州一体が一丸となってIR誘致に向け取り組んでいます。
ただし、現在は資金調達先の経営状態が思わしくないといった理由から、審査は継続中となっています。
長崎IRの事業効果とコンセプト
九州・長崎IRのコンセプトは「Accept,Devise,Creation」 です。日本語に直すと、「受け入れ、融合、創造」となります。
大村湾に面する長崎IRでは、豊かな日本の自然と非日常な施設であるリゾートを組み合わせることによって、国内外問わず多くの観光客が交流します。
そういった様々な文化を受け入れ、融合させていくことにより、新しい価値を創出することが長崎IRの目的である、と区域整備計画では説明されています。
確かに長崎は江戸時代からヨーロッパや中国などと深い交流があり、常に新しい文化を受け入れ続けてきたとも言えます。
そういった意味では、海外からの観光客を見込める場所として素晴らしい立地であると言えるでしょう。
さて、長崎IRでは以下のような事業効果を見込んでいます。
経済効果 | 見込み内容 |
---|---|
年間売上 | 5,200億円 |
年間来場者数 | 840万人 |
雇用者数 | 30,000人 |
長崎県への年間納付金 | 310億円(入場料を含む) |
カジノリゾートで収益が見込めるばかりではなく、雇用を創出して地域経済を活性化することにより、長崎県の人口を拡大させるといったねらいも込められています。
長崎IRは認定見送りの可能性も?現在は審査継続中
長崎県は、すでに長崎IRの整備計画を国に提出しています。しかし、2023年8月現在、未だ国から整備計画の認定は下りていません。整備計画を判断する国交省は長崎IRについて「審査中であり、審査委員会では(認定の)期限を設けていない」とコメントしています。
その理由としては、長崎IRの資金調達先に問題があるからではないか、と推測されています。長崎県の整備計画によれば、長崎IRで必要な資金調達金額はおおよそ4,400億近くかかると言われています。
長崎IRの有力事業者であるカジノオーストリア・インターナショナル・ジャパンによると、その4割ほどは出資金から捻出、残りの2,600億ほどは金融機関からの融資で賄うとされています。
しかし、この金融機関に外資系の金融機関や投資ファンドなどが多い上、その一つの金融大手であるクレディ・スイスが経営危機で他行による買収が決まったことから資金面の不安が指摘されています。
現在も審査は続けられていますが、このまま問題が解決しなければ長崎IRの認定が見送られる可能性はあります。
有力事業者のカジノオーストリア・インターナショナルとは?
九州・長崎IRは、オーストリアの国有企業であるカジノオーストリア・インターナショナル(CAI)社を中心に運営されることが決まっています。
カジノオーストリアは、オーストリア政府が運営するカジノを主体とした企業です。世界35ヵ国・300箇所以上でカジノをはじめとするゲーミング施設の運営を手掛けており、実績は十分といえます。
また、国営企業であるため贈収賄防止マネジメントシステム・コンプライアンスマネジメントシステムなどの厳格な世界標準規格は全く問題なくクリアしており、ヨーロッパで最高の権威とも言われる「国際ゲーミング賞」を4度受賞しています。そのことからも、信頼性は非常に高いと言えるでしょう。
さらに、CAIグループは国際展示場、ラグジュアリーホテルブランド、エンタテインメント施設、デベロッパー、ゼネコンなどを一手に引き受けているため、IRとの相性は抜群!
当然ながらギャンブル依存症対策の取り組みも行っているので、観光客の満足度が高い施設が出来ることが期待されています。
カジノ(IR)誘致を撤退(中止)した候補地
現在、カジノリゾート誘致に手を挙げているのは大阪府・大阪市、長崎県の2つですが、過去にIRを誘致していたものの撤退・中止という判断を行った候補地もあります。
撤退が決まった自治体もあるものの、現在計画を中止している候補地は、今後計画を再開することもあります。
国の方針としては、初めて整備計画が認定されてから7年が経過した段階で次のIR候補地を募集すると決めているそうなので、2030年以降これらの候補地がIRを整備する可能性は十分にあると言えるでしょう。
次に、IR誘致を中止・撤退した候補地について解説します。
和歌山県・和歌山市[和歌山マリーナシティ]
和歌山県・和歌山市では、和歌山県の雇用を増やし人口減少・経済衰退を止めるなどの目的から、和歌浦湾にある「和歌山マリーナシティ」のIR誘致を目指していました。
2021年には事業者選定を完了させ、市議会では賛成多数で区域整備計画が可決されていたのですが、2022年4月の県議会において反対多数で否決され、IR誘致からは撤退しました。
IR区域整備計画が反対多数で否決された【2023年4月】
県議会で区域整備計画が否決された理由は、初期投資額4,700億円の調達計画が不透明であることが問題視され、反対多数となったからとなっています。
ただし、IR計画が白紙にはなったものの、これはIR誘致に反対というわけではなく資金計画に不安が残るための反対という県議員からの声も多く、問題が解決した場合は改めて誘致に臨むという姿勢も示しています。
神奈川県・横浜市[山下ふ頭]
横浜市は2019年に山下ふ頭へのIR誘致を発表し、IR候補地としてはかなり有力視されていました。
また、セガサミーやメルコなどの事業者も積極的に手を挙げており、非常に期待されている自治体ではあったのですが、その一方で横浜港ハーバーリゾート協会など強い権力を持つ団体からは強く否定されており、市民の声も真っ向から対立しました。
2021年8月に行われた横浜市長選では、カジノ反対派の候補者である山中氏が前市長である林氏を破り当選しました。その結果、2021年9月16日に正式に撤退を表明しました。
横浜市長がIR誘致を撤回[2021年9月]
2021年に行われた横浜市長選では、IRの誘致を進めるか、撤退するかというスタンスが焦点の一つでした。
IR撤退を掲げて選挙に臨んだ山中氏は前市長である林氏をはじめ8名の候補者の中からダントツで票を稼ぎ当選。翌月には正式にIR誘致から撤退しました。
IRの誘致に賛成していた横浜商工会議所は山下ふ頭を誘致推進に利用する要望書を提出していましたが、山中市長は「カジノを除いた再開発に向けた検討を行う」という考えを述べています。
北海道[苫小牧市]
北海道ではIR誘致に積極的な自治体が多くあり、自然が豊かで交通アクセスも良い苫小牧市などが名乗りを挙げていましたが、現北海道知事である鈴木氏は生態系が破壊されるなどの理由から誘致にある程度慎重な姿勢を見せていました。
ちょうどこの時期に新型コロナウイルスが猛威をふるい、事業者の経済状況は悪化。鈴木知事は「十分な検討期間が確保されたとはいえない」として誘致申請を見送ることになりました。
現段階では白紙にしているが再挑戦も視野に【2019年】
苫小牧市は新千歳空港にほど近い民有地がIRの予定地となっており、自然豊かな環境と交通アクセスといった利点から積極的に誘致が推進されていました。
しかし、2021年3月には現知事がIR誘致を正式に見送ることになります。
とはいえ、現知事は「誘致見送りは誘致断念ではない」とも強調しています。7年後の新IR候補地選定に向け積極的な姿勢を見せているため、2030年代に北海道にIRが来る可能性もあると言えるでしょう。
北海道[留寿都村]
北海道は苫小牧の他にも小樽や釧路などの候補地がありましたが、その中でも「留寿都村(るすつむら)」はIR誘致にかなり積極的な姿勢を見せていました。スキーコースやゴルフコースが楽しめるリゾート施設を備えており、工期を短縮できることから費用対効果を期待されていました。
しかし、当時IR担当の副大臣であった秋元衆議院議員が、留寿都村の有力事業者であった中国企業から賄賂を受け取っていたことが発覚します。
そしてIR計画に携わっていた地元企業の会長も在宅起訴されたことから、IR誘致は無期限に凍結されることになりました。
汚職事件によるイメージダウンから計画を凍結【2020年】
IRを担当する内閣府の副大臣だった衆議院議員の秋元司被告は、中国企業「500.com」などから合わせておよそ750万円相当の賄賂を受け取ったとして収賄などの罪で起訴され、懲役4年の実刑判決を言い渡されました。
北海道では2020年代後半にIR誘致の再挑戦を考えていると見られますが、留寿都村ではマイナスイメージが先行してしまうため計画再開はかなり難しいと言えます。
千葉県・千葉市[幕張]
千葉県千葉市にある幕張新都心は、すでにMICE施設や幕張メッセなどの集客施設を備え、成田空港も近いことからIRを作りやすい場所として有力視されていました。
2019年には民間企業者からIRに関する提案や情報提供を依頼するなど積極的な誘致の検討を行っていたものの、申請期間が想定より短いなどの理由で準備に時間が取れず、現在は誘致の申請を見送っています。
正式に誘致の申請を見送り中【2020年】
千葉市はかなり早期に誘致の検討を行っていたものの、国の定めるスケジュールが想定より厳しかったこと、また2019年に千葉県では台風被害が起きたため、その復興を優先することなどを理由に誘致を見送っています。
しかし、幕張新都心は都心からのアクセスも空港からのアクセスも抜群で、広い敷地や多くの施設を有するといった大きなメリットがあり、IR施設の運営にメリットも多いエリアです。
そのため千葉市としては引き続きIRが成立するかについて、引き続き研究を行うとコメントしています。
日本でカジノ(IR)誘致を表明している候補地
現在、区域認定申請には参加していないものの、誘致を積極的に考えている候補地がいくつか存在します。
特に東京都と愛知県に関しては新型コロナウイルスの影響によりIR誘致に向けた取り組みを一時中断していますが、事業の撤回を表明しているわけではありません。
国の指針としては、区域認定の見直しが7年後(2029年頃)に行われることになるので、IR誘致の取り組みが再開された場合は候補地になる可能性が高いエリアと言えるでしょう。
続いての項目では、今後IRの誘致を行う可能性の高い自治体について解説します。
東京[お台場]
元々、日本でのカジノを解禁させるきっかけとなったのは、1999年に当時東京都知事であった石原慎太郎氏がお台場にカジノを誘致することを掲げたからと言われています。
20年以上が経過したものの、国の施策としてIRが議論されるようになった今、現職の小池都知事も慎重ではあるもののある程度IRには前向きな構えです。
2021年度の都予算にはIR調査費を計上したほか、事業者からはIRの計画提案書なども提出されたものの、2021年7月に「新型コロナウイルス対策の優先」のため検討作業の中止が発表されました。
同年には東京五輪が開催され、お台場周辺は公共施設が数多く残されています。国内外から集客しやすい立地であることも踏まえると、今後積極的に誘致を行う可能性は高いと言えます。
愛知県・名古屋市[金城ふ頭]
「愛知県」と「名古屋市」はそれぞれ別にIR誘致を進めている珍しい自治体です。
名古屋市がIR建設候補地としている金城ふ頭は、国際会議場や水族館が立ち並ぶほか、現在は再開発が進むエリアとなっています。また、名古屋の繁華街からのアクセスが良好となっており、気軽に利用しやすい場所と言えます。
しかし、名古屋市にほど近い三重県・桑名市を一方的に指名して三重県側から抗議を受けたり、県とは別に誘致を推進するなど、周囲の自治体と全く連携が取れていない印象を受けます。この状況では、国が整備計画を認定することはかなり難しいと言えるでしょう。
愛知県・常滑市[中部国際空港島]
名古屋市とは別に、愛知県では中部国際空港がある常滑市をIR建設候補地として考えています。
2005年に中部国際空港・セントレアが誕生し、名古屋市中心からも電車で30分ほどで着くというアクセスの良さで大変便利な立地となっています。
さらに、2019年には愛知国際展示場も開業し、MICE施設も周囲にあるため初期投資額が抑えられるというメリットがあります。
ただし、名古屋市と候補地が競合しているなどのデメリットもあり、大村県知事は誘致には積極的ではありません。現在は新型コロナウイルス対策を掲げ検討作業を中止しています。
日本全国(47都道府県)のカジノ誘致の表明状況
これまで紹介した自治体以外にも、これまでにIRの誘致を表明した(表明していた)都道府県があります。これらの日本全国のカジノ誘致に関する状況についてまとめています。
北海道・東北
北海道 | 撤退 |
青森県 | 意向なし |
岩手県 | 意向なし |
山形県 | 意向なし |
宮城県 | 検討中 |
秋田県 | 意向なし |
福島県 | 意向なし |
北海道は次回誘致を検討していますが、現在はIR誘致を撤退しています。東北地方では宮城県が検討したものの誘致を見送っています。
関東地方
東京都 | 休止中 |
神奈川県 | 撤退 |
埼玉県 | 意向なし |
千葉県 | 撤退 |
茨城県 | 意向なし |
栃木県 | 意向なし |
群馬県 | 意向なし |
関東地方では、神奈川県(横浜市)・千葉県(千葉市)がそれぞれ誘致を検討しましたが、両自治体とも撤退を表明。東京都は現在検討作業を休止中です。
中部地方
新潟県 | 意向なし |
富山県 | 意向なし |
石川県 | 意向なし |
福井県 | 検討中 |
山梨県 | 意向なし |
長野県 | 意向なし |
岐阜県 | 意向なし |
静岡県 | 検討中 |
愛知県 | 検討中 |
中部地方では、福井県・静岡県で誘致の検討があったもののその後の動きはなし。愛知県では県と名古屋市が異なる候補地を検討しています。
近畿地方
大阪府 | 進行中 |
京都府 | 意向なし |
兵庫県 | 意向なし |
奈良県 | 意向なし |
三重県 | 意向なし |
滋賀県 | 意向なし |
和歌山県 | 撤退 |
近畿地方では、大阪府・大阪市が整備計画の認定を受け進行中。和歌山県では県議会が否決したことで撤退を表明しています。
中国・四国地方
鳥取県 | 意向なし |
島根県 | 意向なし |
広島県 | 意向なし |
岡山県 | 意向なし |
山口県 | 意向なし |
徳島県 | 意向なし |
香川県 | 意向なし |
愛媛県 | 意向なし |
高知県 | 意向なし |
中国・四国地方では、2023年8月現在でIRを誘致する意向を出している県はありません。徳島県では、民間団体や商工会議所で誘致を推進していましたが、県としての意向はありません。
九州・沖縄地方
福岡県 | 意向なし |
佐賀県 | 意向なし |
長崎県 | 進行中 |
熊本県 | 意向なし |
大分県 | 意向なし |
宮崎県 | 意向なし |
鹿児島県 | 意向なし |
沖縄県 | 意向なし |
九州・沖縄では長崎県が整備計画を提出し認定を待っています。福岡県・宮崎県・沖縄県では誘致の提言や検討があったものの、現在意向はありません。
日本のカジノやIRについてよくある質問
- 世界的に成功しているIR(カジノ)はどこ?
-
世界的に成功しているIRといえば、アメリカ(ラスベガス・アトランティックシティ)、中国(マカオ)、シンガポール、韓国などにあるカジノリゾートです。
これらのリゾートではさまざまなサービスを安価で提供しつつ、カジノの収入によって利益を安定的に上げることができています。
ラスベガスが特に知られていますが、実は今韓国がIRブームとなっており、現在は20近くのカジノが韓国の領土内にあります。
- 日本のカジノの入場料は?
-
日本人や在日外国人がIRにあるカジノ施設に入場する際は、1日(24時間)あたり6,000円の入場料を徴収することが決められています。
ただし、その他IRの施設に入るときに入場料はかかりません。また、訪日外国人に関しては入場料を支払わなくともカジノに入ることができます。
- なぜ日本でカジノをやっては駄目なの?
-
日本では、政府が別途特別法などで定める競馬や競艇などのギャンブルを除いては、賭けを行うことは「賭博罪」という犯罪に当たります。
そのため、IRで遊ぶことのできるカジノは法律で「遊んでも罰されないカジノ」と定められているのですが、そのほかのカジノは法律で特別な取り扱いを受けていないため全て賭博罪が適用されることになります。
- カジノ法案でオンラインカジノも合法化される?
-
現在、海外にサーバーがあり賭博行為を海外で行っているとも取れるオンラインカジノは、合法か違法かを定める法律がありません。
現在のカジノ法案は「賭博罪」に抵触しないように慎重に法律が作られているため、カジノ法案が成立することによってオンラインカジノが合法化される、もしくは違法化されることにはならないと言えるでしょう。
政府に特別な動きがあれば合法化・違法化のいずれかになる可能性はありますが、少なくとも日本でカジノが解禁される=オンラインカジノが完全合法になる、とは考えない方が良いでしょう。
日本のカジノ(IR)法案のまとめ
現在、IR(カジノリゾート)の誘致を表明している自治体は「大阪府・大阪市」と「長崎県」の2つとなっています。そのうち、大阪府・大阪市は既に国から整備計画の認定を受け、此花区・夢洲にIRが建設されることが決まっています。
新型コロナウイルスなどの影響もあり、IRの開業計画も後ろ倒しになることがある程度分かっていますが、日本にカジノができるのは2020年代後半〜2030年くらいと見積もられているようです。
パスポートが無くても楽しめるカジノを、カジノに興味がない方でもリゾート地として遊んでみてはいかがでしょうか?